« プリンタのカートリッジ問題 | トップページ | 第39節:福岡戦(観戦後) »

取引所の障害

まあ、借金持ちにはあまり縁のないところではあるのだけど……orz

障害による、東証株式全面取引の半日停止という、前代未聞のトラブルが発生した。

上場株というのは、(換金するときの金額は兎も角)すぐに換金できるという意味でも、投資家にとって重要な金融商品である。必要なときに換金できないと、ただの紙切れ(しかも今は株券の発行すらほとんどない)。
というより、その換金性を向上するために、証券取引所が創設されていったわけだ。

なので、換金性が失われるということは、その存在価値も疑われると言うこと。銀行でいえば、預金の引き出しができなくなるのと、ある意味変わらない。1度なら兎も角、何回も長時間起こるようであれば、金融商品としての信頼性が落ちる(つまり取引所の商品である証券の地位が下がる)可能性がある。

蛇足だが、名証の「相場報道システムの異常による取引停止」(「取引システム」ではないことに注意)も興味深い。つまり、公共性の高い金融商品は、取引の可否だけでなく、取引するための相場情報(株の約定値など)も必須であるということを示唆している。怪しげな金融商品に手を出す前に、「公平な情報を取得できるか」という切り口で立ち止まってみることで、詐欺まがいの商品に引っかかる可能性を低減することができると思う。

事業法人(株を発行している側)は、このところ経費削減という観点から、重複上場を解消(つまり大証や名証などの上場を廃止して東証一本にする)する方向に動いていた。しかしこの一連の騒ぎをきっかけに、株主サービスとして、大証への重複上場を維持する方向に流れるかもしれないね。

その意味では、大証も商売が下手。東証が障害の際、大証の注文がどっと増えたためシステム能力が追いつくかが心配されたが、「大証は東証のバックアップ的な存在価値もあるが、通常の取引からの収入では突発的な取引増に対応できない。金融システムの維持の観点から対応を政府でも検討して欲しい」とでも言っておけば、財務省から金を引き出せたかもしれないものを。
また、「東証障害の際の取引維持を検討せよ」と金融庁に言わせれば、東証以外の取引所でも取引できるようにする(=大証会員にならざるをえない)という義務を証券会社が負うことになるわけで、大証の会員増(少なくとも減少を防げる)という効果も期待できたものを。
……しかし、札幌と福岡の証券取引所も同様に半日NGだったんだけど、ほとんどニュースにもならなかったなあ。

脱線した。
で、東証のダメージなんだけど、

機会損失の面では、実はそれほどではないような気がしている。
主要な銘柄は大証と重複上場しているし、全日停止になったわけでもない。証券会社から取引所への損害賠償要求というのも、主幹事会社としての証券会社と取引所の関係(誤解を恐れずに書けば、証券会社は上場したい会社から上場準備の各種業務を請け負うが、上場認可するのは取引所であるので取引所の機嫌を損ねたくない)という部分を考えると、現実的ではない。
また、ある意味ほぼ独占企業であり、かつ今ホットな業界なので、業績的にも一時的な影響にとどまるだろう。今まで低迷していた(競争相手である)大証の巻き返しが懸念材料とはなるが。

しかし中の人にとっては、案外「審査組織の再検討」という「とばっちり」が大きいのではないか。

上場審査などの自主規制機能については、金融庁と東証で対立している。金融庁は分離・別会社化を求めているが、東証は分離を拒否している。半官僚的な組織である東証にとっては、権限の縮小は超重要問題だからだ。
しかし今回の障害を機に、「東証に全てを任せるのは危険だ」という流れになりかねず、金融庁の発言力が強まる可能性が高そうである。金融庁としても、監査組織を独立した非営利機関で運営できれば、天下り先を確保できるという、これまた組織としての超重要問題なのだから。


さて最後に、システムを構築した「富士通」のダメージはどうか。

請負なのか支援なのかはよくわからないし、発注仕様書レベルの問題なのか実装の問題なのか、受け入れテストの位置づけや確認環境、検収レベルで見つけるべき不具合であったかどうか、開発契約の内容など、不明な点が多すぎるので、「損害賠償」の有効性や金額などは推測できない。
ただ、それほど富士通から「金銭として」引っ張れないような気がする。もちろん、労働力(人工)の無償提供というレベルではそれなりにありそうだが。

こういう「大企業」に発注する、発注主の心情としては、
・ハードもまとめて面倒を見てくれる
・人繰りや維持保守、システム改造能力などの心配がない
・金融システムのノウハウがある(と勘違いする)
・最後はなんとかしてくれる
つまり、「丸投げしてもなんとかしてくれる」という意識があるのではないかとSは想像している。想像ではあるが、いろいろ聞こえてくる事例から言っても、大きくは外していないと思う。

で、こういう要望に応えられる会社は、案外少ない。日立・IBM・NEC・富士通・(NTTデータ・ユニシス)あたりが主だったところだろうか。この手の案件は基幹業務が多いので、システム寿命も長い。一度受けると、保守だ改造だと金を引っ張れる、ある意味おいしい分野でもある(言い過ぎか)。
さて、このような発注をする側としては、発注責任を問われるのが一番怖い。いきおい「問題が少ない」「問題が起こった際に責任を引き受けてくれる」発注先を選びたくなるもの。

さて富士通の場合、この週に2度(東証・名証)の重要障害で「問題が少ない」という要件に「みそ」を付けてしまった。
「大規模系の丸投げ」を今後も各社から受注したいと思うのであれば、後者で(東証以外の将来の発注者に対する)アピールをせざるを得なくなった。富士通からのコメントは聞こえてこないが、どのような対応をするのだろうか。
富士通としては、東証障害に関する対応を、東証だけを意識してやるわけにはいかなくなった。注目である。

|

« プリンタのカートリッジ問題 | トップページ | 第39節:福岡戦(観戦後) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92399/6899372

この記事へのトラックバック一覧です: 取引所の障害:

« プリンタのカートリッジ問題 | トップページ | 第39節:福岡戦(観戦後) »