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重田征紀選手の引退

突然の、予想外のニュース。解雇はあっても引退をこの時期に決めるとは、想像していなかった。
急なことで頭の整理もつかないが、少し書いてみたい。

重田選手はご存じの通り、小野信義選手と共に、チーム創設以来の生え抜き選手である。

JFL開幕戦、急造チーム、しかし1万1千人余が横浜国際総合競技場に集まり、多くの人々がこの日を待ち望み、新たな命に喜び、そして「J復帰」を願い、勝利を信じた。
その試合で「黄2枚」で退場になったのが、重田選手である。1-2のビハインドの中、ロスタイムに増田のゴールで同点に追いついた後半、何としても勝ちたい、勝たなければいけない試合。その想いが裏目に出た結果だったかもしれない。しかし、彼の熱いハートは、サポーターの心をとらえた。

彼のプレースタイルは、スピードを生かした縦への突破、と思われている。それはもちろん、負けることが嫌いな彼の、一つの武器である。普通の選手では間に合わないだろうラインぎりぎりの長いパスに追いつき、クロスを上げる。あるいはワン・ツーで相手DFの裏へ抜け出し、キーパーの前に早いパスを出す。相手DFが警戒して深めに守れば、精度の高いアーリークロスを出す。FWと彼が打ち合わせている姿もよく見られたが、FWからも信頼されている証だろう。
突破後のセンタリングの精度を問題視されたこともあるが、他の選手では(間に合わないため)センタリングを上げることすらできないという事実、トップスピードで上げることの難しさ、にも目を向けるべきであろう。

しかし、彼の本当の特徴は、粘っこい守備にあると思う。
執拗なマークで相手を苛立たせるしつこい守備、ラインを見方にした絶妙なポジショニング、抜かれると見るや相手ファールにして切り抜けるクレバーさ、相手スローインになるところをマイボールにする集中力、相手を見切りクロスを上げさせない巧さ、長身選手にもPA外であれば決して負けないヘディング力。
J2初年度2001年における横浜FCにとってのベストマッチの1つ、第37節京都戦@西京極において、朴智星を完璧に押さえ込んだ守備を思い出していただければ、良くわかるのだが。
#なので、あんなに簡単にセンタリングを上げられてしまうSBが何故スタメンなのか、と思うことも多々あった。

そして、諦めない心。
PKを取られても、GKがはじいたボールをクリアしようと身構えている姿が、いつもあった。ゴールに転がるボールを寸前で掻き出したことも、1度や2度ではない。
そして、負けないために、勝つために、攻める姿。
彼のJ2での得点は2つ。そのいずれもが、2点以上ビハインドの状況での得点(湘南戦新潟戦)である。
そう、勝負にこだわった男、それが重田征紀である。

だから、「引退」と聞いたとき、一瞬信じられなかった。手術までして再起を図った彼が……。

確かに、今期は以前ほどの力を発揮できなかったかもしれない。今期の徳島戦@鳴門、相手の先制点は、ゴール前で重田がヘディングで競り負けた結果でもある。跳躍力が回復していなかったこともあるのだろう。
(ジェフが退場しビハインドで何とかしたいという想いが、2枚目の黄に繋がったのは彼らしいところだし、あのプレーで2枚目を出される所が今期の運のなさを示しているのかもしれない。)

怪我が完全に癒えていないからかもしれない、とも思っていた。出場停止ついでに少し休めば復活するだろうとも。しかし、学校の先生の如く「退場」という形だけで判断されたのか、干されてしまい、その後スタメンに戻ることはなかった。そうこうする内にまた怪我をするという、悪循環。

そう、人工芝という環境が、彼の選手生命を縮めた可能性がある。特に今年が(長浜などの天然芝の練習場を使わず)人工芝中心の練習場であったことは、手術明けの彼にとって致命的だったかもしれない。ただでさえ、怪我をしやすいプレースタイルである。
ただこの選手が横浜FCサポーターに愛されたのも事実であり、またこのチームに巡り会えなければJ100試合以上出場という快挙が為し得たかどうかもわからない。


私の本音を言えば、もう一年、他のチームで良いから、彼の特徴が生きるチームで思いっきりサッカーを続けてほしかった。少なくとも今の監督の下では、彼の特徴は生かせなかっただろう。しかし、サッカーを続けるために手術をしたはず。ならばもう少し……。

しかし、サッカー小僧の、負けず嫌いの、その彼が引退を決意するほど、武器である足は、疲弊していたのだろう。

彼は、決めたのだ。

私は、彼の判断を尊重すること、三ツ沢で感謝の意を表すことしか、できないではないか。

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