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誤発注事件と売買システム改善

1つの注文で1000億円の損?(2)の続きです)

では、売買システムの改善はどのように行えばよいのだろうか。
批判ばかりでもアレなので、少しは建設的な意見を出してみよう。

実際にはいろいろな切り口はあるだろうが、ユーザーインターフェイスに限って考えると、
 a)入力値のチェック
 b)確認方法の改善
 c)約定時のシミュレート情報の表示
あたりが、すぐ思いつくところだろう。
またこの程度であれば、それほど仕様も膨らまない(≒費用もそれほどかからない)と想定されるし、それなりの効果も期待できるであろう。

a)入力値のチェック

実は、発注株数に於いては、みずほ証券の例でもちゃんと検知できており、警告画面も表示されていたという報道がある。

但し価格については、言及されていない。おそらく新規上場株という特殊性のため、検知できていなかったのであろう。(上場済みの株であれば、前日値などを基準とした値幅制限情報があるので、それをキーにチェックしているはずである。)
しかしながら、新規上場株でも概ね「公募価格」はあるわけで、それをキーにチェックすべきだろう。もちろん、最良気配(現在一番安い売り注文や、現在一番高い買い注文)などの情報を使ってもよい。

b)確認方法の改善

報道でも、「よく出るので慣れの中で結果的に無視してしまった」とある。どんな警告が「よく出て」いたのかはわからないが、軽微なレベル(注意程度)のものがほとんどだったのだろう。「警告」は、出せばいいと言うものではない。特にクリティカルなシステムに於いては、重要度をオペレータに認識させることが重要である。

一つの方法として、重要度によって確認方法を厳格化する手法も考えられる。「注意」と「警告」の分離である。

例えば、「警告を無視して実行」する場合は、警告解除のパスワードを入力させるなど、一手間かけさせることが肝要である。できればクロスチェックの考え方を入れた運用、つまり入力者とは別の人(例えば上司とか)しかパスワードを知らない、といったガードをかけるべきだろう。

もちろん、「よく出て」いた警報全てを、この確認方法にすることは無理がある。そのために、「注意」と「警告」をよく吟味して振り分ける必要がある。取り返しがつかないレベル(警告)の話なら、少々運用コストがかかっても確認方法を万全にする必要があるし、取り返しのつくレベル(注意)の話であれば、確認方法を運用コストとの天秤に掛けてもよいだろう。

c)約定時のシミュレート情報の表示

例えば、
「今この注文が約定し反対売買すると、約3700億円の損失となる可能性があります。よろしいですか?」
と表示されたら、入力者もさすがにちょっと考えるのではないだろうか。

この数字はどうやって算出したかと言うと、
  (売り注文の単価-市場価格※)×売り注文の株数
  =(1-61万円)×61万株≒ -3721億円
である。
  ※目安なので、公募価格や前日値、現在の約定値や気配など、取得しやすいものでも可

つまり、指定値で売って、今の(おおよその)市場価格で買い戻した場合どうなるか、を計算している。すぐに反対売買して大きな損が出るような注文は、誤入力の可能性が高いわけである。わざわざ他人に大儲けさせるために取り引きする人は極めて少ないからね。
しかも、計算に使ったこれらの数字は、全て既にシステム上に存在している数字である。それほど実装は難しくないだろう。

○注文取消について

あと蛇足だけど、注文取消についても、一言。

今回は、売り注文を1円で出したが、実際の東証側での扱いは、ストップ安値(当日の取引下限値)に変換されてしまった。そのため、注文取消を「1円」のものに対して出しても、取消ができなかったという問題が、混乱に輪をかけてしまった。

注文取消時に価格を指定する方法では、今回のように指定値以外での扱いとなった場合に、混乱が生じることがはっきりした。脳内変換が必要というのは、特にレアなケースにてパニックを引き起こすので、禁忌である。
取引番号などを使った指定など、注文時と同じパラメータを使えるような改善が必要であろう。

……それ以前に、下限値以下で入力できてしまうシステムがまずいという話もあるが。

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