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ライブドアって結局何が悪いの?

こちらに雑感を書いてから、連日連夜ライブドア問題が報道されていますが、「逮捕されたから極悪人」「右から左へお金を流すだけで儲けてけしからん」っていうレベルの切り口で叩いているマスコミ多すぎ。

「逮捕されたら極悪人」なら裁判所なんて要らない。「右から左」を虚業というなら金融業なんて虚業の本丸だし、ある意味流通業も同じでしょう。そうではなくて、「ライブドアのどういう行為がどういう根拠で悪いのか」を踏まえた報道が必要なはずです。しかし、面倒なのか理解する能力が無いのかわからないですが、そういった報道に(個人的には)残念ながら今のところめぐり合っていません。

マスコミが整理しないなら仕方ない。日経紙面(1/26朝刊)に上村達男(早稲田大学教授)による解説が掲載されていました。彼の指摘は、
  1)株価吊り上げ……株価が上がる状況を意図的に作り出した
  2)高値売り抜け……自社株を取得できる状況を作り出し、高値で売り抜けた
というものです。

取引手法として、結局何が問題だったのか、これを元に整理してみました。

<株式分割事務の悪用→1)株価吊り上げ>

株式分割をすると、新しい株券の印刷に1ヶ月以上かかっていました。その間株券がないため、売りたくても売れない、ということで買いばかり入る事態となるそうです。買い手も株券の受け渡しを受けて転売できないので、売ることが出来ないとのこと。ですので本来の価値以上に株価が上がる状況を作り出せるということになります。(とはいえ、値がつくということは売りがあるということだと思うのですが、私は実務を知らないので解説できません。)

しかし市場では、分割時の株価上昇は有名な話で、分割予想銘柄の思惑買いなんてのもよくある話です。確かにライブドアは積極的に利用した面があるとはいえ、市場で容認されてきた手法といえるかもしれません。


<CBの発行による自社株の取得→2)高値売り抜け>

自社株を高値に吊り上げたとしても、高値で自社株を売り抜けられなければ意味がありません。しかし、その元玉である自社株を取得することに対しては、さまざまな規制があり、通常は実現できません。
そこで、転換社債型新株予約権付社債(CB)を利用することで、その規制をすり抜けたということです。

CBは、通常は社債(会社の借用証書)なのですが、ある株価(転換価格)で株券に変えられる権利がおまけ(?)についています。要は、株価が低ければおまけを使わずに社債として償還(借金を返してもらう)する、株価が高ければ社債を株券に買えて受け取る、というのが投資家にとって得な債券です。

このCBを関係者や関連会社に発行し、前に書いた「株式分割事務の悪用」などで株価を吊り上げ、CB→株式に転換します。すると、

・自社のCBを関係者や関連会社が取得し、株式に転換
  →関係者や関連会社が自社の株式を所有します
     →関係者や関連会社は実質自社の配下にありますので、事実上自分たちの株券となります。

こうすれば、事実上自分たちの株券となります。あとは高値で売り抜ければ利益を確保できる、という寸法のようです。

ただ、このようなCBやワラントのような、将来株式を入手できるような形態については、潜在株式の存在による財務不透明化や、債務隠しなどの観点からもバブル期から問題視されていました。一般的には、ストックオプションがよく知られる例のひとつでしょうか。
ですので、ここまで放置してきた金融庁などの責任が大きいと思われます。


<投資事業組合の利用→2)高値売り抜け>

買収対象企業の株式を、自分たちが支配する投資事業組合に買わせます。
その後、その投資事業組合が持っている(買収対象企業の)株券を自社株と交換して、子会社化します。
すると、

・買収対象企業の株式は、自社が持っています
・買収で使った自社株式は、投資事業組合が持っています。
  →投資事業組合は実質自社の配下にありますので、事実上自分たちの株券となります。
その後は、CBのケースと同様、高値で売り抜ければ儲かります

5%ルール(株式の5%以上を保有する場合は報告が必要)などに抵触しそうですし、買収対象を特定の社外者に漏洩して取引することはインサイダーにあたるような気もします。これが黒に一番近いのかもしれません。
ただ、子会社や取引会社などを使った分散保有というのは、それほど稀有なやり方ではないような気もしますが。


<今までの基準としてどうだったのか>

ある時の行為は、その時のルールによって裁かれるのが、この国のルールです。
では、堀江氏が跋扈していた当時のルールはどうだったのでしょうか。

上村氏の文章を借りると、「(略)~からくりの大半は一年以上前から分かっていたことばかり」のようです。これがルール上問題であれば、「捜査権を有する証券取引等監視委員会が(監督官庁である)金融庁とも協力して(捜査を)実施し、検察に告発するのが順序」らしいのですが、「検察それも特捜部が直接乗り出したということは、金融庁の法運用姿勢に対するノーの表明以外の何者でもない」らしいのです。

上村氏の文章からは、今問題となっている当時の取引を、金融庁や証券取引等監視委員会は黙認していた、とも読めます。つまりルール上は大きな問題は無かったと判断していた、と見られれても仕方ありません。問題だと判断していて告発していないなら、それは職務怠慢ですし。


<雑感>

ライブドア独自の手口ではなく、各々は多かれ少なかれ知られており、当時は規制当局から大きな問題と扱われていなかったわけで、世紀の極悪人のごとく叩かれるほどの行為なのか、という疑問がさらに大きくなりました。

もちろん、ライブドア関係者が悪くない、などと言うつもりはありません。しかしながら、以前から分かっていたのが本当であれば、本当に叩くべきところはそこではないでしょう。能力不足の証券規制、検証力の無いマスコミ、無節操に群がる投資家、そして時代の寵児としてもてはやし一般人を煽ったマスコミ。
そして、必要以上に叩くことで自分たちの罪から目を遠ざけようとする意図、が透けて見えるような気がして……、見てて後味が悪いですよ。なんだか。

まあ個人的には、80歳になる私の祖母から「叩きすぎ」という意見が聞けて、救われています。80の祖母ですらそうなのですから、私が思っているほど一般の人はマスコミに煽られておらず、冷静に見ているのかもしれないなあと。
もし彼らに功罪あるのなら、功を罪にすり替える愚は犯さないよう、惑わされない眼を持ちたいものです。

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