« 環境改善をしよう(6・一部訂正) | トップページ | 新体制発表(横浜FC) »

タクシードライバーは眠れない(3)

全ての業種で「自由化=値下げ」「値下げ=顧客増」なのでしょうか?
今回の混乱は、その思いこみが要因かもしれません。
前述の通り、単価を下げても、必ずしも顧客が増えるわけではないし、安全輸送という公共交通機関としての役割を果たすことができなくなっては、元も子もありません。

<視点を変えて>

私が京都の学生時代、当時の学生達はMKタクシーを好んで利用していました。確かにMKタクシーは他のタクシーより運賃が安かったのです。しかし女子学生に聞くと「安全だから」という答えが返ってきていました。
MKタクシーの運転手教育は行き届いており、乗客が誰でも、距離が長かろうと短かろうと、紳士的に対応してくれます。ですから、若い女性でも、安全のための短距離利用でも、安心して利用できるタクシー会社を選んで乗っていたわけです。
(MKタクシーは毀誉褒貶ありますが、利用者の切り口からの話ですのでご了解のほど)

このエピソードを逆に考えると、「安心してタクシーに乗れない」という実状があるわけです。これは、公共交通機関としての責任が果たされていないのはもちろん、潜在的需要を取り逃がしているという側面があるのではないでしょうか。

<距離別乗り場とかいかが>

例えば駅や空港のタクシー乗り場。以前は大型・中型・小型などで乗り場を分けているケースがありました。料金体系が多様化した今となっては、存在意義が薄れてきています。これを例えば、「近距離」「中・遠距離」に分けてみてはどうでしょうか。

利用者は気兼ねなく近距離を使えますし、運転手にとっても、回数で稼ぎたい人と距離で稼ぎたい人の両立が可能となり、精神的にも楽になるのではないでしょうか。もちろん潜在需要の掘り起こしという面も、大いに期待できます。

<近距離でも儲かる運賃体系>

タクシーは、距離に比例した運賃となっていますが、実は公共交通機関では例外的な運賃体系でして、他のモードでは距離逓減(距離が長くなると運賃上昇率が下がる)が一般的です。確かに最近は、長距離は割り引くなどのタクシー会社も現れていますが、長距離が高収益で短距離の採算が悪い、という傾向は解消されていません。
これは、実車率(客が利用している時間の割合)の問題があります。短距離の場合は回数を稼がないと実車率が上がらないのですが、供給過多の現状では改善は容易ではありません。

本来、タクシーが担う公共交通機関としての役割の本命は「短距離」です。
しかしながら自由化一本槍では、前述の通り役割を果たせないことは明白ですので、その役割を確保するためには行政主導の施策が必要です。

例えば「基本運賃」という考え方はどうでしょうか。「乗ること」に対する料金を設定するわけです。
  現行運賃=距離運賃+時間運賃
  新運賃案=基本運賃+距離運賃+時間運賃
競争は「距離運賃」「時間運賃」で行い、「基本運賃」は公共交通機関の機能維持のための必要経費という考え方です。

この案だと、短距離でも長距離でも基本運賃を稼ぐことができます。こうすることにより、長距離と短距離の収益格差を緩和でき、回数で稼ぐことも可能となります。短距離は値上げになる可能性が高いですが、安全・安心な公共交通機関を維持するための必用なコストです。
しかしながら自由化に任せては実現できません。公共交通機関としての機能を確保する責任は行政にありますから、行政主導で対応する必要があります。

<高くてもいいじゃない>

タクシーには上限運賃がありますが、通勤列車でもグリーン車サービスが増加している時代です。条件付きで上限運賃を撤廃することも「あり」でしょう。
ハイヤーの分野かもしれませんが、ロールスロイスのタクシーがあっても良いですし、年寄りの通院の帰りに買い物につきあって荷物も運ぶというサービスもできるでしょう。月契約での定期的な訪問サービスなども、田舎の年老いた親を心配する夫婦には重宝するかもしれません。
顧客のニーズがあるなら、上限や運賃体系にこだわることはないはずです。

<修正する勇気>

「自由化」のメリットを国民に認識してもらうため、国交省が運賃値下げの方向に誘導したことは理解できます。しかし、デメリットが顕在化してきた現状では、メリットとデメリットのバランスを取り、公共交通機関の機能を維持する責任が国交省にはあります。このままの状況を放置すると、乗客の生命にかかわる重大な問題に発展します。
今まで「自由化」一本槍で来ているわけで、路線修正は面子がつぶれる面があるのかもしれませんが、責任の重大性を認識して本来の目的を達すべく、介入を英断すべきでしょう。

「自由化」とは、「顧客が自由に選択できる」状況に変革することです。規制緩和はその一手段に過ぎません。

(終)
(関連:タクシードライバーは泣かない

|

« 環境改善をしよう(6・一部訂正) | トップページ | 新体制発表(横浜FC) »

コメント

今日、花園の帰りに大阪駅に立ち寄ったら…。ありました。近距離用乗り場。乗り場の脇に周辺地図に半径3kmの円がかかれたものが「おおよその目安」として掲示されていました。
中・長距離用の乗り場がどうなっているかは確認できませんでしたが、「距離別」というシステムは存在するみたいですね。

投稿: Muh | 2006.01.22 20:31

詳細な情報がありました。
http://www.osakataxi.or.jp/info/noriba_o.html

やはり中・長距離乗り場もちゃんとあるようです。

投稿: Muh | 2006.01.22 22:40

花園と言えば、トヨタ対NECを最後の方TVで見ていました。良い試合でしたね。
大阪駅にはありましたか。素晴らしいですね。ただ空港やターミナル駅は、長距離狙いで半泊まりで並ぶタクシーもいるほどで、おそらくタクシー側の事情もあるのでしょう。また観光客などへのイメージ対策として、自治体側の要請もあるでしょうし。
そういう動機付けが薄い中堅以下の駅などにも、地元密着→利用者の拡大という面で、同様な措置がほしいところです。

投稿: | 2006.01.22 23:03

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92399/8174979

この記事へのトラックバック一覧です: タクシードライバーは眠れない(3):

« 環境改善をしよう(6・一部訂正) | トップページ | 新体制発表(横浜FC) »