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あえて東証を擁護してみる(1)

巷では、取引活況に起因する東証システム停止が話題となっています。東京証券取引所(東証)にて、約定件数がシステム設計値(1日あたり450万件)を越えそうになったため、通常は15時まで取引を行うところ、14:40で取引を停止したという「事件」です。

ニュースでも市井の人がインタビューを受けてましたね。

「困ります」と渋い顔のそこのおっさん、その時間道を歩いているしがないサラリーマンが、取引が20分短縮したくらいで何か困るんですか?

「おかげでライブドアで1日で1000万円損しました」って、そりゃババ抜きに負けただけだろ。持ってる方が悪いって。ソフトバンクや光通信で学ばなかったの?っていうか、東証の停止とは関係ないし。

なんて冗談はさておき。

確かに、東証のシステム停止は困ったものです。東証としても結果として「被害」が発生しているわけですから、弁解の余地はないでしょう。換金性という金融市場に必要不可欠な機能が停止した事による、証券市場に対する信頼性が著しく損なわれたことは、国益をもゆるがす事態です。結果責任はとらなければなりません。
とはいえ、マスコミのように、事実や状況を押さえずに叩けばいいというものでもないと思います。天の邪鬼のSとしては、ここでは、思考実験として「弁護」をしてみましょう。

<バブル期以降の取引増加~この1年の増加量は半端ではない>

皆が株に狂乱したバブル絶頂の1989年。この年の日経平均終値は38915.87円で、東証一部株式の売買高(以下、売買高)は年間2600億株です。
その後相場は低迷し、1992年には14309.41円の安値を付け、売買高も年間650億株まで落ち込みました。また外国株も東証から撤退ということで次々上場廃止となり、証券会社もコスト削減のため地方証券取引所を中心に会員脱退が相次ぎました。
証券会社等会員からの資金に頼る東証にとって、この時期のシステム投資は、会員の収益状態からも、相場状態からも、困難であったことは容易に想像できます。

バブル時期と同レベルの売買高に復活するのは、2003年(年間2800億株)であり、実に14年の歳月がかかっています。その間には、1999年4月末での立会場廃止による全銘柄システム化や2000年問題、2001年の同時多発テロによるリスク管理対応、2000年の光通信・ソフトバンクショックによる個人投資家の被弾・撤退もあり、システム「増強」というベクトルを指向することは、これまた困難な時期でもありました。

翌年の2004年は、約500億株増(年間3300億株)と、2002年→2003年の増加(約900億株増)と比較すると、増加幅は半分に減っており、増加ペースが落ち着いてきたという見方もできる状況でした。しかしながら昨年は約1500億株の増加(年間4700億株)です。これは、前年の3倍の増加幅であり、なんと1992年の年間売買高(650億株)の2倍以上の取引がこの1年間で増加した計算になります。このことから見ても、この1年の取引増加がいかにすさまじいことががご理解いただけるかと思います。


<個人投資家参入による取引量の増加~約定回数の爆発的増加>

取引所で取引できる最低株式数を、「単位株数」と言います。株価低迷による証券活性化策として、この単位株数を引き下げることが推奨されました。
例えば、株価=500円で単位株数=1000株の銘柄を購入する場合、500×1000+手数料≒50万円が最低必要です。これではサラリーマンが気軽に投資、という訳にはいきません。まとまったお金が必要だということもありますし、値下がりの影響も甚大(例えば20%=100円下がると10万円損する)です。
これが、単位株数=100株に引き下げられるとどうでしょうか。最低金額が500×1000+手数料≒5万円となり、比較的気軽に購入できますし、損しても被害が少なくて済みます。……もちろん利益も少なくなりますが。

実は、株式分割でも同じ効果が生み出せます。1株を10株に分割すると、理論上は1株の価値が10分の1となり、株価も10分の1となります。先ほどの例だと、株価が500円→50円になりますので、最低金額が50×1000+手数料≒5万円となり、単位株数の引き下げと同様の効果が出ます。
株式分割といえば、今話題のライブドア関連が有名です。ライブドア本体の株式分割は2003年の6月末ですし、100分割で話題になったライブドアマーケティングは2004年の11月と、極最近の話です。
このように、株式取引が手頃な金額でできるようになったことに加え、手数料の自由化、ネット環境の改善、携帯での株式取引の普及、景気回復なども相まって、昨年頃からは空前の株式ブームとなっています。

……要するにこの1~2年で個人投資家がかなり増えたということです。

証券会社や機関投資家と異なり、個人投資家は売買単位が小さい、という特徴があります。逆に言えば、同じ売買高だったら、個人投資家が多い方が注文件数が多い、ということになります。例えば同じ10万株の取引(単位株数=1000株)でも、機関投資家なら1件の注文かもしれませんが、個人投資家なら100件の注文になる可能性があります。しかも、これが上記の例のように「単位株数引き下げ」「株式分割」を伴うと、100件ではなく1000件の注文に増えるかもしれません。

つまり、個人投資家の取引が増えると、売買高の増加割合以上に注文件数や約定回数が増加することになります。昨年増加した1500億株は、昔の1500億株とは比較にならないほど約定回数が多くなっているため、システム上の限界に達しやすくなっています。

(続く)

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