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タクシードライバーは眠れない(2)

このように、自由化の行き過ぎによる副作用は大きく、乗客が運転手の過労により危険にさらされる、というのは大問題です。
しかし、自由化自体は悪い話ではありません。少なくとも、1990年頃に発生した「乗車できない」「顧客の選別」という状況は、規制に起因した人災であり、公共交通機関としてはあるまじき事です。

問題は、タクシーの特性を理解せずに自由化を進めてしまった点にあります。

・労働集約的側面
・顧客が増えない
・顧客は車を選べるのか

<闇雲な自由化は問題>

タクシーは、労働集約的産業ですから、時間的制約が大きくなります。つまり「単価が半分になるから倍働く」ということが難しく、危険さえ伴います。

同じ公共交通機関でも、バスや電車は、単価が半分でも輸送人員を倍にすることは可能なケースが多いです。例えば、バスの乗客が10人@400円のところ、20人@200円で営業収支が同じ、という机上計算は成り立ちます(乗務員の労働時間はほぼ同じなので)。が、タクシーの場合は(一度に2組乗せるわけには行かないので)単価の引き下げは即、単位時間の収入減につながりますから、稼働時間を延ばすしかなく、タクシーで8時間@4000円(適当)を16時間@2000円にすることになり、成り立ちません。

しかも、参入の自由化により、リストラの受け皿としての機能も果たす結果となってしまいました。単価が下がり、客の奪い合いとなっては、乗務員へのしわ寄せは必死であり、公共交通機関に求められる「安全性」が確保できなくなります。
このような業種の自由化は、過度な労働条件の悪化を避けるよう、手段を講じる必要があります。

<顧客が増えない>

国交省とタクシー会社はおそらく「利用者が増える分で減収がカバーできる」と思っていたのでしょう。しかし、想定より増加しなかったようです。理由は諸説あるでしょうが、私は「安ければ利用するというものではない」からだと思います。
……確かにMKタクシーが京都で好評を博している、ということが話題となり、東京進出時に価格破壊の寵児としてのみクローズアップされました。しかし後(3)で述べますが、価格「だけ」が支持を集めていたわけではありません。

タクシーで複数の運転手から「最近はチケットを使う会社も減ってきた」と聞きました。タクシーチケットは原則として、一定金額以上使う会社に対してしか発行されないとのこと。つまり、企業によるタクシー利用自体が減ってきている可能性が高いと言えそうです。もちろんチケットが無くても領収書決済をすればいいわけですが、社員にとってもチケット利用より心理的ハードルは高くなりますし、企業がタクシー費用に対し厳しい眼を注ぐようになった表れとも読みとれます。
少なくとも、企業利用では「半額になったから倍使う」というような雰囲気はなさそうです。夜間割増料金時間帯での長距離利用は、タクシーにとって大きな割合を占めるわけで、ここでの減収は大きな影響となります。

近距離はどうでしょうか。

「流し」では、500円タクシーが好調のようです。但し一般タクシーの客を奪っている側面が強いようで、仮に全て500円タクシーになった場合、本当に顧客が増えて単価減少分をカバーできるかどうかは、定かではなさそうです。さらに、「流し」が簡単につかまるのは、23区内や主要都市の一部区画だけなので、「あ、安いのが来たから乗ってみるか」という機会が、全体としてどれだけあるのかという問題もあります。

問題がより大きいのは、駅などの「付け待ち」です。
日中の中・遠距離については、元々使わざるを得なくて使うケースが多いため、2~3割安くなったからと言って、それほど利用が増えるとは思えません。利用者を増やすには、自転車や徒歩で駅などを利用する人々を掴むことが早道です。絶対数も多いですし。
しかし、客待ちの長蛇の車列、殺伐とした雰囲気、短距離の行き先を告げたときの舌打ち……。確かに運転手にとって見れば、1時間客待ちして2メータだとコンビニのバイトの方がよっぽどマシですから、気持ちは分からなくもありません。しかし短距離客にとっては、ちょっと奮発したつもりがこの仕打ち。気軽に利用したいという気が起こらなくなっても、これまた仕方ありません。悪循環です。
回転が良ければ近距離でもそれなりに儲かるはずなのですが、これだけ台数が増えると。

<顧客は車を選べるのか>

自由化による目的の一つに、競争力のない企業の淘汰があります。
しかしその前提として、顧客が良い企業や商品を選択することが必要ですが、タクシーの場合は当てはまるでしょうか。

「流し」の場合、1分待って2台以上タクシーが通るようだと「選べる」と言えるでしょう。実際、京都ではMKタクシーを選んで乗ったりしていました。しかし、都市部や繁華街などの一部、かなり限られた地域のみとなります。
「付け待ち」の場合はさらに条件は厳しくなります。大阪はどうかわかりませんが(笑)、普通は先頭の車両に乗ることになります。1台後ろが乗りたい会社の車であっても、選ぶことは事実上難しいです。

これらの事象をタクシー会社から見ると、接客やサービス向上よりも、台数増加の方が収益機会が増える、と捉えられそうです。これでは、資金力のある企業が弱いところを買収していくだけとなり、「淘汰」に繋がりませんので、自由化の目的を果たすことができません。運転手の淘汰も、サービスの質より長時間労働という体力勝負に左右されそうです。
顧客にとっても、料金が少々下がったとは言え、サービス向上は臨めず、むしろ「危険」というリスクまで負わされるわけで、決して望ましい状況とは言えません。

3へ続く

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