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外国人労働者の不法滞在問題

イラン人一家の15年以上のオーバーステイに対し、入管より国外退去命令が出ている問題です。
ミクロで見れば、大変かわいそうな話です。15年も住めばその地域でのコミュニティもでき、子供にとっては生まれ故郷・育った地となります。かの地に帰るといっても、ここまで長期化しては難しい面もあるでしょう。

それにしても、難しい問題です。

まず、高裁・最高裁が、「在留特別許可」をしないという法務大臣の判断に対し、取消を命じなかったのは仕方ないでしょう。現行の法律では、原則が退去で「特別」は例外、そしてその例外の判断は法務大臣が担うことになっているのですから、解釈論としてはあまり議論の余地はないのでは。その法律の是非は、立法論で本来対応すべきでしょうね。

しかも不幸なのは、「在留特別許可」の基準が曖昧との指摘を受けて、明確化に取り組んでいる最中の問題だということでしょう。その指摘を受けて、子供が中学生ならOKで小学生ならNGとの基準が示された中、数ヶ月の差でNGという状況を「曖昧さ」で解決する余地が昔より少なくなっているわけですから。

このミクロの話で言えば、もちろん「再審の申し立て」はやるべきでしょうが、一旦退去して正当な形で再入国するという両にらみで(政府側も含め)対応して欲しいと思っています。そもそも不法滞在状態が問題なわけですから。
幸い、長女については留学生としての再入国の可能性を入管が示唆しているようですね。


で、もう少し俯瞰してみると、さらに問題は難しくなります。


不法滞在者はある意味犯罪者ではありますが、日本人もある意味で加害者です。
不法滞在者を就労させる目的は、低賃金の労働力確保です。そして、その果実は日本人が搾取するわけです。
(不法滞在者自身がどう感じているかは、また別の問題です)

しかも今回のケースでは、外国人登録証明書が自治体から発行されています。確か、発行時の原則としてはパスポートが必要(だから外国人登録証明書を携帯していればパスポートの携帯は不要)だったはずですから、自治体の不法行為※の可能性すら考えられます。
もちろん自治体は、人道的観点から特別措置をしたのかもしれませんが、地域にとってのメリット、すなわち安価な労働力が地域の発展に寄与するという観点が0だったとも思えません。
いずれにせよ、(良かれと思ってでしょうが)不法状態を認識※しながら放置した自治体の行動が、結果として事態を複雑にした面があります。
  ※:詳細を確認していませんので、実際は当該運用で問題ないのかもしれません。


日本人は、大量の外国人労働者を受け入れる覚悟があるのか?という点も大きな問題です。

お涙頂戴に成功した外国人は助け、それ以外の(同じような境遇の)外国人は放置するのでしょうか。入管から長く逃げおおせた外国人はOKにするのでしょうか。何年オーバーステイしても子供がいなければNG?
不法滞在者を選別する基準というのは、なかなか難しいものです。

このような「不法滞在」という悲しい状況を少なくするためには、「不法滞在」状態を減らすしかなく、現状を変えるのであれば
  ・不法滞在したくなるような魅力を減らす
  ・入国管理を厳しくする
  ・滞在したい人に正式滞在許可を与えるハードルを低くする(門戸を開く)
の大きく3通りが考えられます。

「魅力を減らす」というのは日本の没落を意味しますから、選択の対象とはなり得ません。「入国管理を厳しくする」ということは、今回のアネミさん一家の例の場合はさっさと退去させる、というベクトルになります。それが駄目なら「門戸を開く」方向に進むべし、ということになるでしょう。

「門戸を開く」と何が起こるか。
文化の衝突や犯罪の増加などは、少々定性的な面なので除外するとして、
明らかなのは、就労の争奪が発生すると言うことです。不法滞在までして日本に滞在したい大きな理由は、就労して金を稼ぐことですから。ホワイトカラーエグゼンプションの記事でも少し触れましたが、分配人数の増加→賃金の低下 に繋がります。

もちろん、外国人労働者が流入することで、パイが広がる面もあります。
しかし、この安価な労働力に対抗できる日本人が大多数と思うのは、楽観に過ぎるのではないでしょうか。

逆に「日本人だから」(世界全体で比較すると)高い賃金をもらえている、という面はないでしょうか。そしてもし、その仮説が成り立つなら、その状況を支えている要因の一つは「門戸の狭さ(あるいはコントロール)」ではないでしょうか。そして門戸を開いた場合、現状の「高い」生活水準を維持できるのでしょうか。先達である欧州の現状はどうでしょうか。

門戸を開き「商品と同様に労働も国際(市場)化に向かう」という選択肢もありますし、そのメリットも存在するわけですが、その認識と覚悟が日本人にあるかどうかという点がポイントです。
昨今の風潮を見ると国民がその選択肢を指向しているようには見えないのです。


「ホワイトカラーエグゼンプション」も「不法滞在者問題」も、出所はある意味では経済界ですよね。安い労働力を使いたいという根っこは同じなのですが、後者は国民の感情に訴えることで(ミクロだけでなく)マクロにも影響を与える可能性がありそうです。(いや、ミクロは円満解決して欲しいのですけどね)
そのような観点で、政治家や評論家のコメントを聞くと、いろいろ見えてくることもありそうです。

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