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やっぱり当面は原子力発電が必要

始めに断っておきますが、私は千葉県西部という比較的放射線レベルの低い地域に住んでいます。つまり、今まで原発の「低コスト」による利益を受けており、かつリスクが低いところから言葉を発している、ってことです。ですので、そんなやつの発言は聞きたくない、という方は、この記事を読まないでくださいね。

もう一つ、私にとって電力エネルギーは目的ではなく手段なので、「安定供給」「低コスト」「低負荷」のバランスが良ければ、特定の方式にはこだわりが少ないです。○○教、○○信者、ではない、ということです。

4月頃から書きたかったテーマだったのですが、ようやく少し時間が取れました。
#帰省などのため、コメントいただいても承認が遅くなる可能性があります。ご了承ください。

<発電コストについて>

「コスト」と書くと、それだけで拒否反応を示されそうですが、経済コストを下げられれば、その分の資金を社会福祉へ回す余裕が生まれる、とでも理解いただければ幸いです。

さて、原子力発電の今後について考える場合、最初に確認すべきことは「原発を止めても数年は稼働継続とあまり変わらないコスト・リスクが存在する」という点です。
今春の原発事故で「使用済み燃料プール」の存在が大きな要素であったことからも、災害対策については早急に実施する必要があるでしょう。また、事故に備えた補償費などについても金額の差はあれど必要でしょうし、核廃棄物はそこに既にあるわけでね。

日本は、これから原子力発電を導入しようとする国ではないのです。

その意味では、自然エネルギーとのコスト比較で「原発が低コストなのは災害リスクや廃炉コストが入っていないから」という主張は、少々的外れと言って差し支えないでしょう。前述の通り、脱原発でも当面は相応のコストがかかるのですから。
で、結構な著名人でもこの主張をするんですよね。原発未導入の国には良いアドバイスだと思いますが。

コスト面だけで言えば、安全対策を十二分に行う前提で、現役の原発は稼働継続することが良いのだろうと想像します。今のところいわゆる「自然エネルギー」は問題外ですし、火力も価格はもちろん政治的なリスクもありますから。ロシア(LNG)をなめてはいけない。

あと、コストには「時間的なコスト」もありますね。原子力、石油火力や水力、地熱発電は建設所要時間も長くなり、建設中は発電に寄与できません。まあ原子力発電は、もう新規設置は実質的に無理でしょうから関係ありませんが。


<災害リスクについて>

原子力発電の災害リスクについては甘く見ていた、という事に尽きるのでしょう。
今回、設備・組織・責任の所在など、問題点が洗い出せるだろう点が不幸中の幸いです。

しかし、原子力だけでなく、火力系でも災害リスクが軽視されていたことを忘れてはいけません。
火力はどうでしょうか。石油やLNGの集積基地や発電所タンク、LNG輸送船が大爆発・大火災を起こした場合、隣接する工場や住宅はどうなるか。一次被害だけで半径数キロのオーダーでしょう。そして、化学工場などに延焼したら……。
AERAの2011.8.22号に「封印された東京湾炎上」の記事がありました。参考になると思います。

では水力はどうでしょうか。ダムの決壊は「想定外」で良いのでしょうか。
住宅用太陽光パネルも、重心が高くなる屋根に数百キロの物体を設置するわけで、耐震性も低下するでしょうし、数が多くなると地震・台風などの落下による死傷者も増えそうです。

原子力発電の安全対策はもちろん必要です。が、私は癌で死ぬのも嫌ですが、濁流に建物ごと流されるのも嫌ですし、全身火傷や劇薬吸入で苦しむのも嫌です。原子力系だけに偏らない安全対策政策を実施して欲しいと思います。
もちろん、そのコストは我々国民が負担することになります。負担できる額が青天井という訳はないので、何に対応できるようにするのか「想定」する必要がありますね。もちろん、発電方法によって濃淡があっても良いと思います。


<電力の安定供給>

大容量の蓄電が安価に実現できれば、発電方法は何でも良いんでしょうけどね。

必要な時に必要な電力が供給できることが重要。
蓄電能力が高ければ、余裕時間帯に充電→ピーク時に放電 すれば、ピーク時の発電能力は高くなくても良いのでしょうが、現状では必要電力量のピーク以上の発電能力がないとダメ、ということです。
もちろん蓄電の一形態として揚水発電という手もありますが、水力発電との食い合いの面もありますし、ダムの新規設置が難しい点、そして安価な夜間電力が必要な点(原子力発電は減る傾向!)もあり、過剰な期待はできません。

そうそう、余談ですが、
4月頃でしょうか、夏には首都圏が大停電になるという話が浮上し、各企業が対策案を練り始めた頃です。会社のマイクロブログに「(電気不足で日本が大変なときに)サマータイムを否定するのなら、日本から出て行ってください」と書いた人が。それが管理職だったと知ってさらにびっくり。この会社、大丈夫かなと思ったのを思い出しました。サマータイムではピーク時電力の削減効果は低いですよね。会社の公式の場とは思えない書き方も凄いし。

あともう一つ余談ですが、
「原発がなくても(その他の電力だけで)計算上はピーク時電力をまかなえる」という識者の発言も多かったです。
でもよく見ると、発電所故障や渇水などの発電停止リスクが入っていない。貴方、原発事故では「想定外があってはならない」とか言ってませんでしたっけ?。はたまた、企業の節電対策(勤務日シフトとか夜勤化とか)を織り込んだ話だったりとか。え~来年もやるの?
 #とはいえ自家発電分とか、私も判断に苦しむ要因があったりもしますが。

話を戻して。

つまり蓄電が限られる現状では、太陽光発電や風力発電などの「自然エネルギー」はピーク時電力の計算には入れられない、ということ。それはつまり、「自然エネルギー」発電があろうが無かろうが、火力などの発電所の必要量は変わらない、ということです。
今流行の「原子力から太陽光発電への転換」の場合、
 ・原発は止めても(安全対策や核廃棄物対策が必要なので)コストが浮かない
 ・太陽光発電設備とセットで火力発電所も作る必要がある(ピーク対策)
ので、「自然エネルギー」化は構造的に高コストになります。

その差額を埋めるためには、電気代を上げるか、税金投入するか、ってどちらも国民負担ってことになります。震災の前には、電気料金月額を数百円上げるだけで「国民にとって死活問題」とシュプレヒコールをあげていた自称市民派の方々も多数いましたけどね。


<環境への影響とか>

この点では、太陽光発電は比較的優等生なのかな。原料とか作成時の化学処理とかよく知らないし、機器更新時の廃棄物量は膨大でしょうけど。
どっちかというと、曇りや夜間で発電できないなど、(環境へ、ではなく)環境から影響を受ける方が大きいですね。

原子力発電は、ご存じの通りの状況。放射能物質の管理と核廃棄物対策がまだ確立できていない面があるのがネック。環境に影響を与えるような大きな事故は少ないが、発生すると影響が長期間になります。ただ、ウラン鉱石の必要量が少ないからか、炭鉱事故被害などは石炭に比べ格段に少ないようです。

火力は、いわゆる「CO2問題」をどう考えるか。
  (こんな意見を持つ私が「CO2」を取り上げるのも面はゆいが……)
LNG(液化天然ガス)は、燃焼時のCO2排出が少ないと言われていますが、採掘や運搬時のメタン漏れで、温暖効果は石炭と余り変わらないらしいですね。また、シェールガス掘削による地下水汚染も問題になっているようです。
石油は、メキシコ湾沖での原油流出など、事故による環境汚染が深刻です。石油は利用量が半端無いですから、事故発生数も多くなるのでしょう。
また石炭は、煤塵やSO2などの大気汚染による広範囲な環境悪化があります。本当かどうか知りませんが、副産物としてトン単位の核廃棄物が生まれるという話もあるようで。

風力は、低周波公害が問題となっていますし、副次的には景観問題や鳥の衝突があります。環境から受ける影響としては、台風が問題です。

地熱は、景観問題と温泉への影響懸念でしょうか。
地熱発電に向く場所は、噴火など災害リスクが高いと思われます。事故発生時は、硫化水素などの有毒ガスをコントロールできなくなるかもしれません。
また、温泉好きな日本人としては、温泉への影響は気になるところでしょう。「地熱発電所ができたから草津温泉の源泉が干上がった」なんて事になった日には……

 #しかし個人的には、地熱発電が「自然エネルギー」の中では一番バランスが取れているのではと考えています。斜めボーリングも許可されたことですし。


<結局のところ>

1つで「安定供給」「低コスト」「低負荷」を完全に満たす電力供給方式はないでしょう。複数の方式を組み合わせて実現するしか、今のところは無いと思われます。

・ピーク時に電力を確実に確保するためには、原子力、火力、地熱発電が重要です。安価なベース電源があれば、揚水発電も有効。
・電力量を確保するためには、原子力、火力、水力発電が重要です。
・新規発電所(場所)の建設は、太陽光、火力(主にLNG)、(風力)が比較的容易です。
・既存の発電設備で比較的発電コストが安価なのは、原子力、水力。火力は経済・政治状況により左右。
・通常時に環境負荷が小さいのは、原子力、太陽光、(風力)、水力、地熱発電。
・異常時に環境負荷が高いのは、原子力、火力
・(日本では)発電量の小さい、バイオ、波力・海流などは、原子力発電の代替候補としては当面不採用

という感じでしょうか。
それを踏まえたSの案は以下です。

既存の原子力発電設備に安全対策を追加して運転するが、老朽化や不的確な炉は停止する。電力不足分は火力(LNG中心)で穴埋めする。
「自然エネルギー」としては地熱発電を推進する。太陽光発電は、蓄電能力が飛躍的に増大かつコストダウンする目処が立つまでは、エネルギーの地産地消・分散化として捉える(過剰な推進はしない)。

#本当は、原子炉も適宜最新型に更新していった方が、トータルリスクは下がると思うんですけどね。無理だろうなあ。

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コメント

全般的には合意。


エネルギーのポートフォリオみたいな感じで、リスク分散をしつつ原子力をフェードアウトしていくのが合理的かなと。

あと、自然エネルギーは(水力も見ようによっちゃ自然)地域特性によって選択。

同時に、電気への依存度を下げる方策を進めるのも得策かな。コージェネで熱利用を増やせば、それだけ電力消費を減らせる。

突き詰めたら、多大な労力と輸送コストをかけてゴミを集めて燃やすぐらいなら、風呂を沸かしたり暖炉か薪ストーブにしたらよろしい。(できる地域ではね)

あとはくだらないテレビ番組をやめて深夜は放送を休止、ネットゲームだの何だの子供のおもちゃを禁止して、夏休みやというのにクーラーをかけて補習授業をするのも禁止して・・・・・。

消費生活のレベルをバブル以前に戻す覚悟が、どっかの段階で必要になる。だって、人口減少期やもん。


投稿: ぜん | 2011.08.22 22:14

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